冬の間に昆虫などの幼虫やさなぎに寄生し、菌糸核を形成し、春から夏にかけて茸を成育させます。
冬が虫で夏には草のように見えることから、冬虫夏草と呼ばれています。
冬虫夏草(虫草菌 Cordyseps属)の希少価値
冬虫夏草の代表的な存在が、チベットなどの寒冷高地のコウモリ蛾から生育したシネンシス冬虫夏草(Cordyseps sinensis)で、近年注目されているのが、サナギタケ冬虫夏草(Cordyseps militaris)どちらも人工栽培による量産が困難とされています。
また、含有成分のひとつ、コルジセピンはサナギタケ特有の核酸系の代謝産物であり、その希少性、性質から非常に価値の高い物質です。
本来の冬虫夏草の定義について
菌糸体と子実体
食材として一般的なシイタケやエノキダケ。その食用の部分は、「傘」とか「柄」と呼ばれています。実はそれが「子実体」(しじったい)で、胞子を作る器官なのです。
一方、「菌糸体」(きんしたい)は、いわばキノコの根の部分のことで、胞子細胞から伸びた無数の菌糸がかたまってできています。
「子実体」も「菌糸体」もキノコの一部分ですが、それぞれに含まれる成分は違います。
あの高価なマツタケも菌糸体だとありがたみがないですよね。
冬虫夏草も同じです。
本来の冬虫夏草が成長する仕組み
コウモリガの幼虫に感染した冬虫夏草菌は、幼虫の栄養成分を吸収し、体内で菌糸を成長させていきます。
やがて幼虫は死に、体内には菌糸が充満します。この菌糸の状態を無性世代といいます。
その後、一定の条件のもとで菌糸が充満した幼虫の体から子実体が伸び、十分に成熟して次の世代の感染源となる胞子を放出します。
子嚢胞子が形成される子実体を、有性世代といいます。
虫と草(成熟した子実体)がある、これが本来の冬虫夏草の姿です。
中国と日本とで異なる冬虫夏草の定義
虫草菌~コルジセプス(Cordyceps)属~
虫草菌(コルジセプス属)は全世界に分布し、350種以上が発見されており、その大部分が昆虫寄生性です。その中でも特に有名なものが、冬虫夏草(コルジセプス・シネンシス)です。
「冬は虫の姿、夏になると、草(子実体)」という様子から冬虫夏草と名づけられました。
中国では
冬虫夏草は、冬虫夏草菌(Cordyceps sinensis)が鱗翅目コウモリガ属の幼虫(Hepialus)に寄生し感染後に形成された子実体とその虫との複合体のことを指しています。
中国では特に、青海省・チベットなど、海抜3000m以上の高山に生息したもののみに限定されています。もちろん、この種は日本には生息していません。
日本では
日本での冬虫夏草は昆虫・クモ類、一部高等植物の果実に寄生して生ずるキノコ全般の総称として使われており、その数は日本国内だけで約400種と言われています。
この定義と認識の違いが、市場を混乱させています。
現在、その冬虫夏草をめぐり様々な問題が起きています
2007年7月には四川省の村で冬虫夏草の採集をめぐり、チベット族同士の大規模な衝突が起き、6人が死亡、ケガ人100人以上の大惨事となりました。その後、乱獲が原因で冬虫夏草の発生量が激減、近年の中国国内の好景気による冬虫夏草需要拡大で、1グラムあたり4,000円~5,000円ともいわれ、別名『軟黄金』とも呼ばれています。
また、中国本土での冬虫夏草収穫量の激減により2007年以降中国から日本への輸出はストップし、天然冬虫夏草は日本国内の店頭から姿を消しました。
こういった高額になるのと比例して中国ではニセモノや粗悪品が出回るようになりました。
例えば、小麦粉やでんぷんで作られた信じられないような冬虫夏草などが確認されています。
また元々冬虫夏草という定義があいまいなため、それを逆手に取ったような商品も見受けられるようになってきてるのが現状です。